

Kenichi Tani谷賢一
河童対談 第❶回
伊藤今人Imajin Ito
(ゲキバカ/梅棒)
谷賢一(以下、谷):アフタートーク慣れし過ぎているので司会者いない方が気楽っていう(笑)
伊藤今人(以下、今):2人での対談形式ですね?じゃあ。
谷:だからアフタートークだと思ってやるっていうので
今:いやーしたかったなぁ、アフタートーク。
谷:そうだよね…(ゲキバカの公演と)すごい被りようだもんね。
今:本当にまさにですからね。
谷:そんなお忙しい中、今回はありがとうございます。
今:いえ、とんでもないです。
谷:やってみて…どうですか?すっごい雑な振りだけど(笑)
今:僕からやりたいことを発想して振付ける場合と、これでって指定されてやる場合とでつくり方根本的に違うんですけど…。
僕が振付する前に寧さん(冨士山アネット)の振付見て、っていうのもあって、敢えて差を出したいなとなんとなく思ったし、
他にも色んなジャンルの曲があるので、テイスト分けしようかなぁって言うのを最初に思いました。
稽古見学来て…あ、あれ来てよかったです!その時に河童の動きとかもやってくださったので…
…それは僕のことにらんでやってくださったんですか?(笑)
谷:まぁ実は(笑)
今:そうっすよね(笑)
僕の中でも振付する時に、河童の国での動きのルールみたいのをどう自分の中ででつけようかなと思ってた時に、
ルールづけを稽古場でして下さったんでそれはすごい助かりました。台本だけだともっと欲しいなと思うところがあったんで、
実際に皆さんの動き見ながらやれたのがヒントになりました。
谷:最初確か“こねこね”から入った時に「わぁっ面白そう!」って既にちょっと思ってて…僕、ほんっとにNHK教育が好きで…(笑)
今:あのシュールな感じのNHK教育ですか?
谷:もう全部好き。
今回ああいうテイストがあそこに入ってくるって正直予想してなかったから、何かどれもちゃんと意味はあるけど可愛らしく、
しかもこれネタばれになっちゃうけどピタゴラスイッチ的な組み方をしてるのもすごく見ててわくわくするし、
面白い振付だなぁと思ってすごく嬉しかったなぁ。
今:◯◯◯って、知らない人の輪に入ってやるのはすごく恥ずかしい感じがするけど、◯◯◯をやってる人って、
そこを楽しみにしてるところがあって、全く知らない人と共通の振りだけ知ってて、
そこの輪に入って行って前後の人とのやりとりを楽しむ…みたいな、そういう関係性を楽しみに行くのかなと思って。
だから関係性をその場に居合わせた河童たちが楽しんでる振りにしたいなってなりました。
あと極力シンプルにしようっていうのが僕の頭の中に元々あったので、そこでモチーフにしたのが、「アルゴリズム行進」(笑)
でも、単純なペアになっちゃうのも嫌だったので、円のところは、前の人と絡んで後ろの人と絡んでっていう変化がある。
谷:ああいう遊び心とギミックに溢れた仕掛けの入っている振付っていうのは元々今人くんの抽斗(ひきだし)の中にはあるものなの?
今:今回はそれを狙ってやったんでたまたまそう言う感じになっただけで…
「梅棒」(自身が構成・演出をする団体)自体がお芝居しながらダンスしていくので、相互に影響与えながらのダンスが多いんですよね。
だから、前を向いて全員で一緒の振りを踊りましょうってだけじゃなくて、怒っている相手がいて、脅されてる相手がいて、
恋愛してる対象がいてっていう“対象”がいる中でのダンスになるから、関係性っていうのは常に大事にしています。
その1つの派生かもしれないですね。
谷:“関係性から出発していく振付”っていうのは、おもしろいね。
今:そうなんですよ。だから「梅棒」ではダンスの公演ですけど最初に台本を配るんですね。
これ読んでくれって言って、役者が自分の役とシーンの役割を理解した上で振付に入るのが大事だと思っていて、
振付を最初にしちゃうとそれに捉われちゃって、後付けになるんですよね、感情が。
なので、先に感情と関係性があってほしいっていう。そこは大事にしていますね。
谷:そういう振付を好んでやるようになったのは、元々どういう流れでダンスに入っていったのかも含めて興味があるんだけど、どうかな。
今:僕元々、中1の時から地元の劇団で俳優やってて、「役者になりたい」っていうのがあった。
谷:俳優が先だったんだ。
今:そう、僕ずっと役者になりたい人だったんですね。ダンサーになりたいと思ったことは1度もなくて、実は(笑)
で、地元で劇団に所属しながら、高校ではダンス部に入るんです。大学は演劇の大学に行くんですね。
だけどダンスサークルに入ります。で、ダンスサークルの方ばっかりやってて、演劇の授業一切行かなくて。
谷:(笑)
今:で中退するんです!
一同:爆笑
今:で、大学4年にあたるときに、ダンスサークルが落ち着きを見せたときに「俺は演劇をやりたかったんじゃないのか」ってことに気付き(笑)
演劇熱が高まってる時に1つ上の先輩が所属していた「ゲキバカ(当時は、劇団コーヒー牛乳)」のワークショップに参加して、
それで今に至るっていう流れなんです。
谷:なるほどね。
今:僕は大学1年の時に「梅棒」つくってるんで、「梅棒」の方が先にやってるんです。
「梅棒」もやりながら「ゲキバカ」もやってるっていうのが続くんです。
俳優になりたかったはずが、先に「梅棒」がコンテストで賞取ったりとかし始めて…。
いつのまにか日本一の振付師決めるコンテストで優勝して…。
谷:人生わからないもんだね!
今:両方とも両輪でやってて良かったなっていうのは本当にあって、それは「梅棒」に演劇を持ちこむ一つの糧になってるし、
「梅棒」でやってきたことが「ゲキバカ」にも生きてるっていう。上手い相互作用で来れてるなっていう感じですね。
谷:ダンスとか音楽とかって、どれだけ今の時代に欲望されているかということには正直、演劇の人間としては嫉妬を覚える感じがあって。
たとえばストーレートプレイですってだけで観ない人もかなりの層いるから、
それは嫉妬でもあるけど、同時にたとえば「梅棒」でいろんな要素をミックスして、
新しいエンターテイメントを作っていくっていうのは、ある意味すごく時代の求めている欲望にあってる創作活動だから、
すごく評価されてるんだろうなっていう気もするんだよね。
この先そういうスタイルの創作というかジャンルっていうのはまだまだ増えてくるんじゃないかなとも思うな。
今:簡単には出来ないってことを思い知らせてやりたいですね(笑)
谷:もちろんそうだと思うよ。ただそのジャンルに注目が集まれば集まるほど人材も流れてくるから。
谷:「ゲキバカ」って“お客さんとの温度”を大事にする芝居をやってるじゃない、それは自分のダンスにも反映されてるのかな?
今:「梅棒」はまさにそうで、基本的にはお客様に「伝える」っていうのが1番のテーマなんですね。
創作のエゴとか、演出でのかっこつけ方とかあるじゃないですか。
ダンスって抽象表現なんで、設定とかニュアンスだけ伝えてあとはお客様の感動に任せますって提示するやり方がほとんどだと思うんです。
それも美しくて素晴らしいと思うんですけど、うちはあえて抽象表現にも関わらず100パーセントの理解を目指すっていう(笑)
谷:全部分かるダンス!(笑)
今:そうです(笑)そこに振り切ってやろうと思っていて。
創作中に道に迷った時にはお客さんが喜ぶのはどっちか、お客さんに伝わるのはどっちかってことで判断することが多いですね。
谷:僕はそれが出来ない時があって。
頭の中で羅針盤として「お客さん目線に立った方が…」っていう声が聞こえても、
いや自分はこっちの方がセクシーだと思うっていって振っちゃう時があって、性格なんだよなって思うんだよね。
今:全然それでいいと思いますよ。
谷:今人君の場合は、嫌々とか苦しんでじゃなくて、それ自体が喜びだったり充実だったりするんだろうね。
今:そうですね。まずは単純にリアクションと拍手と歓声が欲しいってところから始まってるんで(笑)
谷:そこを無理しないでやってるから清々しく見えるんだと思うんだよね。
今:そこの希少価値は狙ってるかもしれないですね。
谷:他の振付家がいるっていうのは意識されました?
今:しましたよー!!!!
谷:やっぱりするんだ(笑)
今:もう1曲とかテイストの違うのとかもやりたかったですけど、時間がなかったですし…そこは悔しいところではありますが…ねぇ。
ダンスをエッセンスにして演劇活動をしている人たちで名前の聞いたことある方が集まっている訳じゃないですか、
負けらんねぇぜっていうのもありつつ…そこが面白いと思って来てくれるお客さんとかもいらっしゃると思うんで、
いまいちだったね「ゲキバカ」の、「梅棒」の、とか言われたくないなとは思ってます(笑)
適材適所で振付が与えられてるんで、それぞれ違うんですけど嬉しかったです。ここでこんな素敵なメンツの中に入れてもらえて!
本当にありがとうございました!!
伊藤今人さんは7月17日(木)~21日ゲキバカ『0号』にご出演されます。是非チェックしてみてください。
ゲキバカ『0号』2014年7月17日(木)~21日(月・祝)@東京芸術劇場 シアターウエスト<大阪公演>7月25日(金)~28日(月)@ABCホール
(まとめ/中村梨那)

伊藤今人 いとう・いまじん
2001年、俳優を志し日本大学芸術学部演劇学科に入学。在籍中に、大学のジャズダンスサークルの同期とジャズダンスエンターテイメント集団「梅棒」を結成。10年以上に渡り、様々なダンスイベントやコンテストに出演。J-POPにのせてジャズダンスでストーリーを展開する独自のスタイルを確立し、2008年に世界最大のストリートダンスコンテスト「JAPAN DANCE DELIGHT」にて、異端のスタイルながら特別賞を受賞する快挙。2012年の「LEGEND TOKYO」で優勝。日本一の振付家集団の称号を手にする。ダンサーとしての活動と平行して、大学在籍時から劇団「ゲキバカ」所属の俳優としても10年以上活動をしており、100本以上の舞台に立つ。その他にも「MC IMAGINE」として両国国技館などで行なわれる国内最大級のダンスイベントをはじめ、全国各地でイベントのMCをつとめるなど、様々な分野でマルチな才能を発揮している。