
河童対談 第❷回
長谷川寧 Ney Hasegawa
(冨士山アネット)

Kenichi Tani谷賢一
谷賢一(以下、谷):まずはお疲れ様です。
長谷川寧(以下、寧):お疲れ様です。
谷:これでもうしばらく会えなくなる訳ですけど。
寧:はい、小屋入りまでね。
谷:どうですか、ここまでやってきて。
寧:いや、僕ねほんとに、仕事が並行に次ぐ並行になってて…なんでしょう、だからそんなにいっぱい回数来てる訳ではないけど、
みんな仲良くなってますね。当たり前か(笑)
一同:(笑)
寧:あと、毎日稽古してくれてるんだなっていうのは映像観ててあって、1曲だけだからっていうのもあるかもしれないですけど、
僕ね…いつもより真面目にダメ出ししてる(笑)
谷:(爆笑)
寧:いや、真面目っていうか細かい。1曲をこんなに毎回見てるので。毎回ちゃんとダメ出しして、光留くん(傳川光留さん/振付助手)に
課題を結構な分量伝えたり、美里(望月美里さん/寧さん振付助手)にも手直ししてもらったりとかやってるけど、結構…ちゃんとやってますよ。
うん。結構ちゃんと仕事してるなってぼく思いました。
谷:(笑)毎日のようにさ、寧メモみたいなやつが届いて、それを基に稽古場で直してくんだけど、
めちゃめちゃ忙しいはずなのに毎日ちゃんと動画を見て、細かく1行単位で送ってきてくれるっていうのは、感謝してるっていうか…
元々細かい人なのかなって思ってたんだけど。
寧:細かいよ。もっと普段は個人個人に言ってますけど、やっぱり(チェックが)映像ってこともあるし、あと20人いるから個人個人言っても…
ってのはあるんですよね。だから勢いが出ればいいなとは思っているので。
谷:僕も1曲、2曲、3曲と振付が出来上がってきてさ、そうするとただ振りの確認をするってだけでもかかる時間も運動量も
2倍3倍になってくる訳だよね。で、それぞれ使う筋肉が違うから…みんなよくやるなって。
僕は踊ってないからむしろ加害者みたいな気持がしてて…。
4曲踊らせ、しかもそれぞれ全員違うスタイルでやってるから、頭も使う身体も使う中でみんなよくやってるなぁと思うね。
寧:大変だと思います。僕は4人も振付家いるとか嫌ですもん。
元々だって、谷くんが僕がやらなかったら、何人かで振付っていうのはやらないっていうから、それ無くなったらなんか僕のせいみたいじゃん。
事あるごとに、「いやっ僕はこうこうこう忙しいから、こうダメですよ」って言っても、これはどうかな…とか最終的には、
(関西で仕事してるなら)関西に派遣するとか言い始めたから、待てと。
もうそこまで言うんだったらじゃぁ分かったやるから、ただ来れないよと、2日しか来れないぞ!という中で、僕どっちかっていうと、
とにかく俳優さんだから丁寧な綺麗さというよりは、負荷をかけて、もがいた先の上澄み液というか。その部分が好きなので、
なるだけギリギリまで粘るというタイプなんで、今回みたいに少ない回数でやるっていうのは、かなり難しいなとは思ってたんだけど、
みんな上手くやってくれてる感じです。
谷:他の振付家の人に話を聞くと、とくに舞ちゃん(中林舞さん)とか、いつもの寧と違うみたいなことを言う人が多いんだけど、
その辺は自覚とかあるの?
寧:でも、やってることとしては俳優さんに踊ってもらうことで、たぶんこんなに返してくれることってあんまり無かったりするから、
こうしたら打てば響く…。僕も今関西でカンパニーに対してやってるけど、劇団とかって頑張ってくれるじゃないですか、
お金にはならない分頑張ってくれる。
一同:(笑)
寧:それは僕はすごく好きだから、その頑張りをちゃんと生かす。明らかに、(作品の)頭から配分間違ってるんですね、この振付は。
一同:(笑)
寧:頭の曲にしては、きついだろうと。配分間違ってるんだけど、4人いるってことは、想像出来ない中でやらなきゃいけない状況だから、
気を使わないでやろうって思って、それで負荷をかけた方が面白いだろうなと思って。
谷:初日にわっと振付した瞬間に、これはやばいとは思ってたんだよね。
でも普段の感覚だったら「いやいやこれじゃきつ過ぎるよ。歌えないし、疲れすぎちゃうし、最初だし」っていう発想じゃない方が、
これはおもしろいなって。見てる人もびっくりすると思うんだよね。頭おかしいだろって(笑)
ある意味、普段だったらちょっと自制心を働かせて抑えるところを型破りにやりまくってるっていうことで、
オープニングナンバーとしてはすごくいいなぁと思うんだよね。
寧:他の曲を聴いてて、結果のあの曲で良かったなって気はしていて。
谷:4曲の配分に関しては上手くいったなっていう気がすごいしてるね。
寧:そうですね…あとは作品が出来れば。
一同:(笑)
谷:いわゆる「冨士山アネット」とは違う振付になってると思うんだけど…そんなことないっていうのは言わないでもらって(笑)
寧:あぁでも最近の踊らないんですよ。
お仕事で振付させて頂く機会も多いんですけど、最近は仕事によってチャンネルを切り替えてやる部分はすごくあったりして。
でもやっぱり普段のカンパニーの振付では「コンタクト」が非常に多いので、そういった点は、最初のところとかに入ってるかな。
谷:僕がこの話に続けようとしたのはね…そんな今回の振付ですが、観に来てくれるお客様へメッセージを…という(笑)
寧:真面目に答えちゃったよ(笑)メッセージ…前半、とりあえず僕は「逃げ切り型」で頑張ります。
谷:どういう意味?(笑)
寧:僕が頑張る訳じゃないですけど、逃げ切り型で体力配分を間違った俳優たちの後半の…つらさであったり、
後半沈む瞬間が絶対途中で出てくると思うんですよ。それが最後に「最後だから」っていうので上がってくと思うんですけど、
そこの身体模様というか、あぁ…リアルにつらいんだろうなっていう。まぁ生なんでね、そこは観て欲しいなって思いますけど。
谷:それは、さっき言ってた負荷をかけた先にある俳優の身体ってこと?
寧:そうですね。たとえば、俳優さんで力を入れて動いてしまいがちな方が多いと思うんで、
それが疲れてくるとたまにいい動きになったりする時もあるじゃないですか。
そういう風になるといいなぁとは思うんですけど。
まぁ、なにぶん、だってこれまだ全部でやってない訳じゃないですか。通してないでしょ?通した時…………ねぇ?
谷:恐ろしいよね(笑)
寧:酸素用意してもいいんじゃないかと。
谷:マチソワ出来るのかってことが僕1番不安ですね。
寧:マチソワいいですよね、絶対3、4ステ目はもうぐずんぐずんになってるでしょうけど(笑)
通した時の体力のしんどさとかは、演出家としては本来は考えるところですけど、なにぶん振付家として呼ばれてるので、
そこは逆に考えないで、僕はぶちぬけようかなと思って…なんとかなるといいなという気はします。
谷:あと言い残したことは…
寧:通した時に本当にがっかりすると思うんだよね、その疲労度に、みんな。
結構僕と舞ちゃんの…炎さん(堀川炎さん)のはまだ見てないけど、この2つはやばそうだしね。
谷:オープニングはみんなで踊るとこが見どころかもね。俳優も疲れるけど楽しいって。
寧:踊っといたらいいんじゃないかな。踊る機会そうないもんね!
長谷川寧さんが主宰する冨士山アネットの公演が9月にあります!是非チェックしてみてください。
eyes plus冨士山アネット/Manos.『醜い男』
原作:マリウス・フォン・マイエンブルク 翻訳:林立騎 構成・演出・振付:長谷川寧
2014年9月5日 (金) ~ 2014年9月16日 (火) @東京芸術劇場アトリエイースト 他 http://fannette.net/
(まとめ:中村梨那)

長谷川 寧 はせがわ・ねい
作家・演出家・振付家・パフォーマー。 2003年、冨士山アネット結成。
言葉を削ぎ落とし、身体性を強く意識した「ダンス的演劇(タンツテアター)」という独自の手法にて演出を行い、類い稀な空間演出と共に独自の空間を描き出す。
自らの公演の他にも外部演出/振付/出演等多数。
2012年より演劇に特化した企画冨士山アネット/Manos.(マノス)を立上げる他、
2014年マイム俳優・いいむろなおきとのユニットArCairo(アルカイロ)にて活動を始動。
近年では2009年シンガポール招聘公演、2011年韓国レジデンス制作、
2012-13年日韓国際共同製作等の海外活動をはじめ、
bonobos、フジファブリック、カサリンチュ、the chef cooks me等のミュージックビデオ振付他、EGO-WRAPPIN’のLIVE振付等、国内外ジャンル問わず活動中。http://fannette.net/
撮影:Hideki Namai